こんにちは、IT+ デザイナーの溝口です。

突然ですが、ECサイトを立ち上げる際(もしくはリニューアルの際)に、最初に考えるべき大切なことは何でしょうか?
ずっと前に「ネットショップを始めるなら①_最初に考えたい3つのこと」というブログを書いたのですが、今の時代はその内容に加えてもう一つ大切な要素があると思っています。

今回はその新しい要素「WHY」についてのお話です。

日本国内のEC事情について

「WHY」について考える前に、まずは現状の日本国内のEC事情について見ていきましょう。

2019年5月16日の経済産業省調べによると、

  • 平成30年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模:18.0兆円(前年16.5兆円、前年比8.96%増)
  • BtoB-EC(企業間電子商取引)市場規模:344.2兆円(前年318.2兆円、前年比8.1%増)

また、EC化率は、BtoC-ECで6.22%(前年比0.43ポイント増)、BtoB-ECで30.2%(前年比0.8ポイント増)と増加傾向にあり、商取引の電子化が引き続き進展しています。

市場規模が拡大しているということは、当然、モール・自社ECサイト含めたECサイトの数もどんどん増えています。
2019年5月のエンパワーショップ株式会社調べによると、国内のECサイト・ネットショップの総稼働店舗数は270万9,043店舗。
2017年の調べでは総稼動店舗数は189万1,637店舗だったので、2年で1.5倍近くも増加しています。

これだけ規模・店舗数が拡大されているので、ECサイトで考えるべきこと、やるべきことも変わってきています。

今までの考え方

今まではECサイトを立ち上げる際、市場分析などと併せて、3C分析やSWOT分析などを用いながら、

  • WHAT(何を)
  • WHO(誰に)
  • HOW(どうやって)

を軸に考える、というのが一般的だったのではないでしょうか。

ここでは各項目の詳細は省きますが、以前はここに「WHY」を加えて考えることは少なかったかと思います。
(もちろん前からやっているところはやっていますが。。)
では、なぜ今「WHY」が大切になってきているのか。

それは、ECサイトの数が増え、商品・サービス・システム・デザインのクオリティが充実してきた結果、お客さんのお店選びの判断基準がより厳しくなってきている、というのが要因かと思っています。
日々増え続ける情報量。
似たような商品・サービスが並び、選択することさえ面倒に感じるようになってくる。

そのような中で、どうすれば選ばれる、愛されるお店にできるのか。
数あるお店の中から、「このお店が好きだ」。
そう思ってもらえる、大切な要素の起点となるのが、「WHY」です。

これから大切になる考え方

「WHY」を突き詰める

「WHY」は簡単に言うと、「なぜやるのか」という部分です。
ビジョン・ミッションの起点となるようなもので、その商品はなぜ生まれたのか、そのサービスをなぜ提供するのか、その事業をなぜ始めたのか。
始めたきっかけがそれに当たります。
たとえ気づいていなかったとしても、想いを持って始める以上必ず何かがあるはずです。

  • 〇〇を通して、世の中の人の健康を支えたいから
  • 〇〇の原産地から、食卓の幸せを届けたいから
  • 日本の〇〇を、元気にしたいから
  • 日〇〇で、みんながワクワクするような未来を作りたいから

など、店長・事業者のルーツを含めて様々なものがあるでしょう。
「今ブームが来てるし何となく売れそうだから」というような理由では、いっときのブームに乗れたとしても、中長期的に継続していくことは難しいですよね。
価格競争に飲み込まれ、ブームの終わりが商品・サービスの終わりになってしまうのではないでしょうか。

ではどうすればよいか。
そうならないための要素が「WHY」です。
「WHY」はその事業を続ける礎・モチベーションとなり、その強い想いが伝わってくるようなお店は自然とお客さまも共感しファンになってしまう。そんな力を持っています。

まずはその「なぜ」の部分「WHY」を突き詰めて明確にする。
ここが全ての起点となり、迷った際に立ち返る全ての指標になります。
「WHAT」「WHO」「HOW」の前に「WHY」。
この「WHY」が明確でなければ、お客さんの心を動かすことはできないでしょう。

知っている方も多いかと思いますが、「WHY」の考え方についてとても有名なのが、TEDで記録的な再生数を誇るサイモン・シネックの講義「How Great Leaders Inspire Action」です。
(「WHYから始めよ! インスパイア型リーダーはここが違う」で書籍化もされています。)
彼は「ゴールデンサークル」というシンプルなパターンを用いながら、Appleを例に下記のような説明をしています。

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ゴールデンサークル
【 What → How 】の順番に考えるのではなく、【 Why → How → What 】の順番で考え行動することで、人々は、この「Why」に惹かれて、物を購入したり、賛同したりする。

【 Appleの場合 】
●What:何をするのか
「iPad」や「Mac」などの製品の開発販売

●How:どうやってそれをするのか
「すべての製品を美しくシンプルにデザインし、誰でも使いやすいユーザーフレンドリーにする」

●Why:なぜそれをするのか
「我々のすることが世界を変えるという信念」や「違う考え方に価値があるという信念」の為に全てが行われている

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同じような製品がたくさんある中で、高価格帯でも売れている理由がここにあります。

講義の詳細が気になる方は下記リンクからご覧ください。
How Great Leaders Inspire Action

ストーリーが共感を生む

「WHY」のきっかけとして魅力的なストーリーがあれば、そこに共感を生む力が生まれます。

例えば、
・〇〇を通して、世の中の人の健康を支えたい
という「WHY」に対して、

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起業した人物が実際過去に体調不良により、ひどく苦しんでいた時に出会った成分が「〇〇」だった。
そのおかげで今自分は健康で充実した生活を送れるようになった。
だから、その成分を研究し、より今の時代にあった形で提供することで、
・〇〇を通して、世の中の人の健康を支えたい
と願っている。

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となればどうでしょう。
なぜその人(企業)がこのお店をやっているのか、そのストーリーが加わることで、「買ってみたい」という想いが生まれないでしょうか。

魅力的なストーリーにはお客さまをファンにする力があります。
ストーリーから商品やサービス、企業のブランドコンセプトが伝わることで、コアなファンが生まれ、その人が周りの人たちにその良さを自発的に伝えてくれます。
個人による口コミ、SNSでのシェア。
一般的な広告の効果が薄れてきた今、それは広告よりも遥かに強い、メッセージです。

そこに最近よく聞くような「サステナブル」「SDGs」に関連するような取り組み・大義名分があれば、なおさら強いストーリーが生まれます。
例えば、パタゴニアのように環境に与える影響を考慮した素材やテクノロジー、資源の利用。
選挙の日に全店舗休業とするなど、たとえ利益が減少しても行うWHYに基づく取り組みは、企業の姿勢をダイレクトに表現し、ファンを増やすポイントになっています。
これは稀有な例なので、ここまでのことは難しいですが。。

ファンからリピーターへ

ECサイトで中長期的に安定した売上を作っていく上で重要なことは、コアなファン、つまりリピーターを作ることです。
新規顧客を獲得(広告経由等)するコストは、既存顧客に比べて3倍かかると言われているので、今いるお客さんを大事にすることはとても大切ですよね。
ただ、お客さんにファン・リピーターになってもらうためには、商品・サービスのクオリティはもちろん、愛されるお店であることが欠かせません。
なぜなら、それがなければ、低価格の類似商品・サービスの競合が出てきた場合に乗り換えらえてしまう可能性が高いからです。

そして、その愛されるお店になるために必要なものが「WHY」と、そこから生まれるお店の姿勢が反映された商品・サービスです。
まずはここを明確にすることがこれからの時代に大切なこと、ひいては成功への第一歩となるでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

魅力的なストーリーを伴った「WHY」を明確にすることによって、共感を生み、ファン・リピーターへと繋げることができます。
ECサイトの成長を支えてくれるのは、「WHY」から生まれるモチベーションと、一緒に歩んでくれるファンの方達です。

ECサイト立ち上げの際、リニューアルの際にこのことを深く考えていただくきっかけとなれば嬉しいです。
もしお悩みがありましたら、ぜひ IT+に想いを聞かせてください。
いつでも全力でお手伝いさせていただきます。